犬のマウンティングをやめさせるには?隠された5つの心理と正しい対処法を徹底解説
愛犬が飼い主さんの足にしがみつき、腰を振る行動を見たことはありませんか?
あるいは、クッションやぬいぐるみに向かって同じような行動をしていませんか?
「恥ずかしいからやめてほしい」 「去勢手術をしたのに、なぜ?」
多くの飼い主さんが、このように悩んでいます。
実は、この行動を「マウンティング」と呼びます。
本来は、繁殖行動の際に見られる行動です。
しかし、不思議なことに、避妊や去勢をした犬でも、この行動をするのです。
また、オスだけでなくメスも行います。
「どう対処するのが正解なのか?」
今回は、犬のマウンティングについて徹底解説します。
なぜその行動をするのか? どうすればやめさせられるのか?
これらを、専門的な視点も交えて詳しくご紹介しましょう。
目次
そもそも「マウンティング」とは何か?

まずは、マウンティングの定義を確認しましょう。
マウンティングとは、前足で対象物にしがみつく行動です。
そして、腰を振り続ける動作のことを指します。
一般的には、交尾の際のオスの行動として知られています。
しかし、メスも同様の行動を見せる場合があるのです。
子犬であっても、腰を振ることがあります。
つまり、現代の考え方は「マウンティング=性的な行動」だけではありません。
遊びやコミュニケーション、ストレス発散など、多くの意味が含まれています。
対象となるものも様々です。
- 人間の足や腕
- クッションやぬいぐるみ
- 同居犬や散歩中の犬
このように、対象は多岐にわたります。
なぜマウンティングをするのか?隠された5つの理由

「自分が上だ」と伝えたい(順位付け)
1つ目の理由は、上下関係の確認です。
犬は本来、群れで生活する動物です。
そのため、相手に対して「自分の方が強いぞ」と示したい場合があります。
これを「優位性の誇示」と呼びます。
もし、対象が「飼い主さん」の場合
注意が必要です。
愛犬との信頼関係が崩れかけているかもしれません。
「飼い主さんよりも、自分の方が偉い」 そう勘違いしている可能性があります。
あるいは、「僕がこの人を守らなきゃ」という責任感から行っていることもあります。
日頃の生活を振り返ってみてください。
- 散歩中、犬が先頭を歩いていませんか?
- おやつを欲しがると、すぐに与えていませんか?
このような小さな積み重ねが原因かもしれません。
愛犬が主導権を握ってしまっているのです。
もし、対象が「他の犬」の場合
「ここでは僕がルールだ」と教えているのかもしれません。
特に、自分よりも年下の犬や、優しい犬に対して行うことが多いです。
「遊んで!」というアピール(誤学習)
2つ目の理由は、飼い主さんへの要求です。
「もっと構ってほしい」 「こっちを見てほしい」 そんな感情から、マウンティングをするケースです。
実は、飼い主さんの過去の対応が原因かもしれません。
愛犬が腰を振った時、どのような反応をしましたか?
- 「やめなさい!」と大きな声で怒った
- 「もう〜」と笑いながら体を退かした
- 名前を呼んで抱き上げた
これらは、犬にとって「ご褒美」になります。
なぜなら、「飼い主さんが自分に注目してくれた」と感じるからです。
これは、完全な誤学習です。
しかし、犬にとっては成功体験になっています。
そのため、退屈な時や遊んでほしい時に、繰り返し行うようになります。
興奮が抑えられない(ハイテンション)
3つ目の理由は、興奮です。 単純に「楽しい!」という感情が高ぶった時にも見られます。
特に、子犬や若い犬に多い理由です。
例えば、ドッグランで遊んでいる時に、走り回ってテンションが上がりすぎると、マウンティングをしてしまいます。
この場合、性的な意味はなく「遊びの延長」としての行動です。
しかし、放置は危険です。
相手の犬が嫌がっている場合は、喧嘩に発展する恐れがあります。
基礎から見直したい方へ
「ダメ!」と言っても興奮して止まらない場合、普段のしつけ基礎が定着していない可能性があります。
成犬になってからでも遅くありません。まずは信頼関係を築く「しつけの基本」をこちらの記事で再確認してみましょう。
ストレスや不安のサイン(転位行動)
4つ目の理由は、ストレス発散です。 これは意外と知られていません。 日常生活の中で、何らかのストレスを感じているサインかもしれません。
- 散歩の時間が足りない(運動不足)
- 長時間の留守番で寂しい
- 来客があって緊張している
- 苦手な音がした(雷や工事音)
このような時、犬はどうするでしょうか。
不安を紛らわせるために、全く関係のない行動をします。
これを「転位行動」と言います。
人間が困った時に、頭をかくのと同じ心理です。
つまり、マウンティングは「SOS」かもしれません。
愛犬は、心のバランスを保とうと必死なのです。
本能的な性的衝動
5つ目の理由は、本能です。
未去勢のオス犬によく見られます。
彼らは、メスの匂いに非常に敏感です。 数キロ先の匂いも感知すると言われています。
もし、近所に発情期(ヒート中)のメス犬がいたらどうなるでしょうか。
オス犬は、そのフェロモンに反応し、本能的に興奮し、マウンティング行動を起こします。
この場合、しつけで止めることは困難です。 なぜなら、自分の意思ではコントロールできない「ホルモン」の作用だからです。 散歩中に特定の場所で腰を振る場合も、そこに匂いが残っている可能性があります。
実は病気が原因かも?見逃せないサイン

ここまでは、行動や心理的な理由を解説しました。
しかし、もう一つ重要な可能性があります。 それは、「病気」です。
陰部やお尻に、痛みや痒みがあるのかもしれません。
その不快感を解消するために、こすりつけている可能性があります。
疑われる主な病気:
- 皮膚疾患: ノミ・ダニ、アレルギーによる痒み。
- 泌尿器系の病気: 膀胱炎や尿路結石による違和感。
- 肛門嚢炎(こうもんのうえん): 肛門腺が溜まりすぎて炎症を起こしている。
チェックポイント:
- 急にマウンティングが増えた
- 陰部を頻繁に舐めている
- おしっこの様子がおかしい
もし、これらに当てはまる場合は注意してください。
しつけをする前に、動物病院へ行きましょう。
まずは、健康状態の確認が最優先です。
マウンティングを放置する4つのリスク

「家の中でクッションにするだけなら、いいのでは?」 そう考える飼い主さんもいるでしょう。
しかし、放置することには大きなデメリットがあります。
愛犬の健康や、社会性に悪影響を及ぼすからです。
足腰への深刻な負担(ヘルニア)
最大のデメリットは、体への負担です。
マウンティングの姿勢は後ろ足だけで立ち上がり、激しく腰を動かします。
これは、背骨や腰、関節に強烈な負荷をかけます。
特に、以下の犬種は要注意です。
- ダックスフンド
- コーギー
- トイプードル
胴長短足の犬種は、椎間板ヘルニアになりやすいです。
また、小型犬は膝蓋骨脱臼(パテラ)のリスクが高いです。
マウンティングが癖になると、これらの病気を誘発し、最悪の場合、歩けなくなるリスクさえあります。
生殖器を傷つけてしまう
衛生面の問題もあります。
毎日、執拗にマウンティングを繰り返すとどうなるでしょうか。
生殖器の皮膚が擦れて、傷ついてしまい、そこから細菌が入り、炎症(包皮炎など)を起こすこともあります。
さらに怖いのが「常同障害」です。
一種の強迫神経症のようになります。
出血してもやめられない状態に陥るのです。
主従関係の崩壊
精神的なデメリットも無視できません。
人へのマウンティングを許していると、勘違いが進みます。
「やっぱり僕の方が偉いんだ」 「人間は自分の要求を受け入れる存在だ」 そう認識してしまいます。
その結果、言うことを聞かなくなります。
さらに、気に入らないことがあると唸ったり、噛みついたりするようになります。
これを「権勢症候群」と呼びます。
愛犬との幸せな生活が、崩れてしまうのです。
トラブルの原因になる
最後は、社会的な問題です。
自宅で許されている行動は、外でも出ます。
ドッグランで、他の犬にしつこくマウンティングをしてしまうでしょう。
これは、相手の犬にとって非常に迷惑です。
「喧嘩を売られた」と感じる子もいます。
その結果、咬傷事故(大喧嘩)に発展しかねません。
また、相手の飼い主さんとのトラブルにもなりますので、マナーとして、必ずやめさせる必要があります。
対象別!マウンティングをやめさせるトレーニング方法

では、具体的にどうすれば良いのでしょうか。
やめさせる方法は、対象によって異なります。
また、愛犬の性格に合わせることも大切です。
ここでは、3つのパターンに分けて解説します。
重要:いずれの場合も、体罰は絶対にNGです。叩いても解決しません。
飼い主(人)にする場合
愛犬が、あなたの足にしがみついてきたら、その瞬間の対応が勝負です。
以下のステップを実践してください。
- 無言で引き離す: まず、「ダメ!」などの声かけは不要です。 なぜなら、声に反応して喜ぶ子がいるからです。 無言で、冷静に体を引き離します。
- 徹底的に無視する(退室): ここが最も重要です。 引き離したら、すぐにその場から立ち去ってください。 部屋から出て、扉を閉めます。 時間は1〜2分程度で十分です。
- 視線を合わせない: 部屋に戻っても、すぐに構ってはいけません。 愛犬と目を合わせず、背中を向けます。
学習させること
「マウンティングをすると、大好きな飼い主がいなくなる」 「楽しいことが終わってしまう」 これを徹底的に教え込みます。
これを繰り返してください。
根気がいりますが、徐々に回数は減っていきます。
他の犬にする場合
多頭飼いや、ドッグランでのケースです。
- 予兆を見逃さない: マウンティングには予兆があります。 相手の首元に顎を乗せたり、しつこくお尻を嗅いだりします。 この時点で、名前を呼んで呼び戻しましょう。
- クールダウンさせる: もし乗ってしまったら、すぐに引き離します。 そして、リードを短く持ちます。 相手の犬から見えない場所まで移動してください。 興奮が収まるまで、じっと待ちます。
- 遊びを中断する: 落ち着いたら、遊びを再開しても構いません。 しかし、何度も繰り返すようなら、その日の遊びは終了です。 「しつこくすると、もう遊べない」と学習させます。
物(ぬいぐるみ・クッション)にする場合
特定の物に執着しているケースです。
- 対象物を片付ける: 最も簡単で効果的な方法です。 対象となっているクッションやぬいぐるみを撤去します。 犬の届かない場所に片付けてしまいましょう。 物理的にできなくするのが一番です。
- 気を逸らす: マウンティングをしようとした瞬間を狙います。 おやつやおもちゃを使って、名前を呼びます。 「マウンティングよりも、こっちの方が楽しいよ」と教えます。
- 外に連れ出す: 興奮している場合は、気分転換が必要です。 外に散歩に行ったり、庭に出したりします。 環境を変えることで、リセットできます。
去勢・避妊手術の効果はあるのか?

よくある質問があります。
「手術をすれば、マウンティングは直りますか?」
結論から申し上げると 「効果はあるが、必ず直るとは限らない」です。
効果があるケース
理由が「性的な衝動」である場合です。
手術によって性ホルモンの分泌がなくなり、衝動が減り、マウンティングも落ち着きます。
マーキングなどの行動も減る傾向にあります。
効果が薄いケース
理由が「遊び」や「支配性」である場合です。
また、すでに「癖」になっている場合も同様です。これらはホルモンの影響ではなく、脳が学習してしまった行動だからです。
とはいえ、手術にはメリットが多いです。
望まない妊娠を防ぐだけではありません。
精巣や卵巣の病気を予防し、発情によるストレスからも解放されます。
長い目で見れば、検討する価値は十分にあります。
まとめ|放置せず正しく対処!愛犬も飼い主さんもストレスフリーな生活へ

マウンティングは、犬にとって自然な行動の一つです。
しかし、現代の人間社会で暮らす上では、デメリットが多い行動でもあります。
今回のポイントを振り返りましょう。
- 理由は一つではない: 支配性、遊び、要求、ストレス、病気など、様々な理由があります。
- 放置は危険: ヘルニアのリスクや、トラブルの原因になります。
- 正しい対処法: 人相手なら「無視」、犬相手なら「クールダウン」、物相手なら「撤去」です。
- 体罰は厳禁: 逆効果になるだけでなく、信頼関係を壊します。
大切なのは、愛犬を観察することです。
「なぜ今、腰を振っているのか?」 その理由を突き止めてください。
もし、運動不足なら散歩を増やしましょう。
寂しいなら、スキンシップの時間をとりましょう。
主従関係が崩れているなら、基本的なしつけを見直しましょう。
原因に合わせたアプローチが、解決への近道です。
飼い主さんが正しいリーダーシップを持つことで、愛犬は安心します。
そして、マウンティングをする必要がなくなるのです。
それでも改善しない場合もあるでしょう。
その時は、一人で悩まないでください。
ドッグトレーナーや獣医師などの専門家に相談することをおすすめします。
プロの力を借りて、愛犬との快適な暮らしを取り戻しましょう。